治療は診断9割、治療技術1割
院で治療活動を行っていると、様々な患者さんに出会います。
多くの方はゴッドハンドと呼ばれる先生に素晴らしい治療技術でバシッと治してもらいたいという思いがあるでしょう。その事自体は私も否定しませんし、患者さんとして当然の感情だと思います。
ただ、肩こりや腰痛に限らず、現在起こっている症状を改善させるには正しい診断を受けて正しい処置を行わないと良くならないのです。
例えば東京から新大阪に行かなければならないとします。その為には東海道新幹線に乗らないといけません。当たり前のことですが、東北新幹線や成田エクスプレスに乗ったのでは、いつまでたっても目的地に着くことはできません。言われてみれば当然のことなのですが、医療の現場ではこれと似たようなことをする患者さんと多く出会います。
以下、体験談をお話しします。
ケース1
80代のAさんが「犬の散歩によくいっているせいか、脚がむくんで仕方ない。揉んでくれ。」と言ってきました。私が「もちろんそれはできますが、脚のむくみというのはただの疲労から来るものではなく、内臓の病気から来ることも多いのですよ。脚のむくみが取れないのであれば、一旦病院(内科)で診て貰ったらどうですか?」とお話ししたところ、「先生そんなこと言って脅さないでくださいよ~。私は体操教室にも週1回行っていて健康体なんだから。」と言われました。
しかし2、3回施術しても脚のむくみが取れなかったため、再度病院を受診することを強く勧めたところ、肝炎を起こしていることがわかり即入院となりました。
ケース2
40代のBさんが20年前から股関節が痛むとのことで受診されました。
しかし20年前からずっと痛いにも関わらず、整形外科でレントゲンを撮ってもらったこともなく、近所のヨガ教室でヨガをやるといくらかマシになるということで、だましだまし今日まできたそうです。私は「20年間もずっと痛いなら、骨に何かしらの不具合が起きているかもしれないから、レントゲンの検査を受けられた方がよいですよ。それだけ症状が長く続いているのであれば、かなり根が深い問題かもしれないですからね。」と言いました。
ただ正直な話「これだけ長期間痛みがあるのに、検査も受けないで一体何をしていたのだろう?痛みの原因が明らかにならない状態だと気持ち悪くないのかな」と思いました。
ケース3
70代のCさんが、来院時にいつも同じような質問を投げかけてきます。
「知り合いで膝の軟骨が擦り減って痛いって言っている人がいるんだけど、そういうのココで治る?」「私の友人で椎間板ヘルニアで医者から手術しろと言われているヤツなんだけど、そういうのもココで治る?」「ウチの妻が足を捻挫して10年経っていて、まだ痛いというのだけど治るかね?」
それに対して私の答えは「Cさん、そういう症状で良くなった人は沢山いますけど、それだけの情報だとあくまで一般論でしか答えられないのですよ。病院だって正確な診断や治療を行うために視診・問診・触診を行いますよね」。当たり前のことですが「膝の軟骨が擦り減っている」という情報だけで治るか治らないか判断しろというのは、なかなか乱暴な話だなと思いました。それ以外にも、その方の年齢や膝の筋肉量、膝関節のバランスや、膝を含めた身体の外傷歴、スポーツ経験の有無によっても変わってきます。
ケース4
土曜日の18時15分頃この日最後の患者さんを治療していたところ、予約なしで50代くらいの男性(Dさんとします)が入って来て、「ここって予約なしでは診て貰えないんだよね」と聞いてきました。私が「はい、そうです。看板や外壁含め3か所に「完全予約制」と書いてありますよね」とお話ししたところ、Dさんが「脚の痺れが酷くて歩くのも大変なんだ。一体どうしたらいい?」と聞いてきたので、私が「それなら近隣の○○病院か□□病院に夜間受付があるので、しっかり検査して診て貰った方がいいです」とお話ししたところ、Dさんが「この脚の痺れって何が原因なのかね?」と畳みかけてきたので、私は「いや、それを詳しく調べるために病院での検査をお勧めしているんですけど」と言って病院に行かせました。
当たり前の話ですが、出会って10秒くらいしか経ってない人を問診も触診もせずに痛みの原因を言い当てることなど神様や魔法使いでない限り不可能です。
如何でしたか? こうして文章で客観的に見てみると「そりゃそうだよな」と思うでしょうが、いざ自分が当事者になると似たようなことをやる人が多いです。
特に私が感じるのが、判断力があるであろう中高年の患者さんほど、自分の症状の原因や体調について楽観的に考えがちである傾向があるということです。中高年の人ほど「私が重大な病気になるはずがない」という固定概念と偏見に縛られ、かつ行動力の低下により医療機関の受診をモタつくケースが多いのです。あまり「トシのせい」という言葉は使いたくないですが、身体は消耗品ですから年齢を重ねていけば不具合が起きてくるものです。長年同じ自動車に乗っていて、「とりあえずこの車走れるから車検出さなくてもいいよね」と言う人はいないでしょう。
では痛みや症状が出たらどうしたらよいのでしょうか? 整形外科、整体、カイロプラクティック、整骨院(接骨院)、鍼灸院と色々あって、何処を最初に受診したらよいか悩むところですが、私が思うに中高年の患者さんで1週間以上痛みが引かないなら、まずは病院(整形外科)を受診することをお勧めします。そこでレントゲン等の検査をして、「特に大きな異常がない」と言われたら整体や鍼灸・カイロプラクティックを受診してセコンドオピニオンを得れば良いのです。
先程東京から新大阪に行くには東海道新幹線に乗ればよいとお話ししましたが、乗ってしまえばあとは寝ていれば目的地に着くわけです。肝炎が原因で脚のむくみを起こしているなら、必要なのは世界一の腕があるマッサージ師よりも、ほどほどの知識と経験がある内科医なのです。治療の正しい方向性を決めるため、まずは適切な場所で的確な診断を受ける。これが症状改善に必要な大きな第一歩なのです。
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