信頼と偽薬効果
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皆さまは偽薬効果(プラセボ)という言葉を御存じですか?
これは例えば頭痛の患者さんに小麦粉などで作られたカプセルを「頭痛に良く効く薬です」と言って飲ませる実験をすると、半分以上の人が治ってしまうことがあります。良く効く薬(に似たもの)を飲んだという安心感が、その人が持つ自然治癒力を高めるのかもしれません。
プラセボという言葉はもともと「喜ばせる」「なだめる」という意味のラテン語からきています。
一方で、二人の自動車整備工が実験をしてみたとします。
2台の壊れた自動車があり、両方とも同じようなエンジントラブルがあると思われる場合、Aの車については、破損していると思われる部分を交換。しかしBの車では、破損した部分に対して偽の修理を行う。いずれの車も修理個所を丁寧に清掃し、エンジンを洗浄してから、「車は大丈夫、良く走ります!」と言う。後ほど、その結果を観察すると、残念ながらBの車の方は依然として壊れたままであるのです。
では人間と車で何故このような違いが出るのでしょうか?
別の実験の例をお話しします。
狭心症の手術といった重篤な症状の実験なのですが、狭心症の正しい手術を受けたグループのうち、患者さんの65%が著しい改善をみせ、ニトログリセリン(狭心症の薬)の量が34%減少しました。一方、胸の部分の皮膚切開のみを行い、心臓に全くアプローチしていないのに、心臓の手術をしたと伝えたグループのうち、患者さんの56%に著しい改善があり、ニトログリセリンの使用量が42%減少しました。この実験をした医師によると、術後1年が経過しても手術をうけた患者69%において、狭心症が50%以上改善し、プラセボの手術を受けた患者100%において狭心症が50%以上改善したという結果を得ました。患者さんの健康状態は比較的重篤といってもよい状態だったとのことですが、手術を受けた患者の65%と手術を受けなかった患者の56%が著しい改善をみせたという事実から、手術の患者さんへの影響は実際にはおそらくプラセボ効果よりも低かったのではないかと考えられます。
更に別の実験の例についてお話しします。
普通にみかける症状(例:咳、風邪、背中の痛み、頭痛など)で病院を訪れた200人の患者さんについての研究を行いました。患者さんは2グループに分けられ、一方のグループには楽観的な問診を行いました。つまり患者さんには前向きな言葉をかけ、病気がよくなること、2~3日のうちには回復するであろうと告げました。他のグループには悲観的な問診を行い、おそらくそう早くは治らないであろうと告げて、更に診断内容を患者さんに十分に教えないようにしました。2グループを更に2分して合計4グループとし、半分には薬を与え、残り半分にはプラセボ治療を行いました。その結果、プラセボ治療のグループは50%が2週間後に回復しました。一方治療を受けたグループでは2週間後53%が回復した。薬の効果に差はありませんでした。しかし、楽観的な問診を受けたグループでは64%が回復し、悲観的問診を受けたグループで回復したのは39%でした。多くの場合、明らかにドクターの態度の方が治療方法よりも重要であることがわかります。
私がこの治療院業界に入ってずっと不思議に思っていたことがあります。それは治療院によって施術のアプローチや考え方がそれぞれ違うのに、何故治る人が多くいるのだろうということです。例えば私が治療技術の勉強でお世話になっているA先生とB先生がいます。例えば腰痛の治療法でA先生は、ある骨を押すアプローチをするのに、B先生は同じ部分を引くアプローチをするのです。つまり180度考え方が違うわけですが、両方の先生の院は笑顔の患者さんで溢れています。
このことから私が結論づけた事は、どんな治療でも基本的には身体の悪い状態(筋肉が硬い・骨が歪んでいる・神経の流れが悪いなど)を一度壊して良い状態を創り上げていくものである。身体に刺激を加えれば、あとは生体が欲する方向に動いていくものである。
ただそれ以上に大切なことは、自分の治療に信念をもって行う事であり、患者さんとの信頼関係を強固に築くことである。誤解のないように強調しますが、治療技術はテキトーで良い。患者さんにハッタリを言っていればよいというわけではありません。偽薬効果(プラセボ)というと「偽る」という字を書くので、患者さんを騙す行為と受け取られかねないのですが、偽薬効果は病気と闘う私達の最強の武器になる可能性を秘めていると強く信じています。
信頼というと臨床での私たちの患者さんへの態度はもちろん言うまでもないことですが、私が考えるに院のHPも大切な要素であると考えています。例えば院に対する考えであったり、治療法についての文章をHP上で3行しか書いていない院と3ページにわたって書いてある院でしたら、どちらを信頼するでしょうか? 真剣に治したいと思っている患者さんでしたら、まず通院前に院のHPを確認すると思いますが、そこから治癒へのストーリーは始まっているのです。
そんな想いを込めて私はHPの原稿を書いているのです。
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